覚悟の響き おまけ@【キラ視点】〜だから私も・・・〜
やっぱり、双子のシンクロってあるのかなって思う。
なんとなく、カガリが元気無い時とか、体調悪い時とか、
分かっちゃうんだ。
たとえ、オーブから遠く離れたプラントに居ても。「カガリ、何かあったでしょ。」
モニター越しにカガリにそう問えば、
素直に頬を染めちゃったりして・・・。――あー、アスランと何かあったんだ・・・。
僕は直ぐにそう思った。
妹の幸せを心から祈る兄としては、喜ばしいことであるはずなのに、
どうしてだろう、何処か釈然としない。う〜とか、まるで子猫が唸るような声をあげて、ぱちぱちと瞬きする仕草は、
とてもオーブの代表首長とは思えない。
はっきり言って、恋する女の子。
素直に可愛いなぁと思いながら、まだアスランを想い続けていることに安堵し、
そしてやっぱり、釈然としないのだ。「で、何があったの。
アスランには絶対に言わないからさ。」うん、言わないよ。
ラクスには言うけど。
そう思った時、ちょうどラクスが髪をタオルドライしながら現れた。「カガリ、どうなさったのですか。」
「うん・・・、」
ラクスが問えばカガリは素直に話し出す、
僕はちょっと切ない気持ちを飲み込んで耳を傾けた。
今日の切ないポイント1。「ちょっとな、私の発言が切欠で、軍が割れちゃって・・・。」
え?それって大丈夫?
僕は瞳を丸くしたが、
カガリが髪を耳にかける仕草が妙に女っぽくて
事の重大さとはかけ離れたように見えた。「それは、さぞ大変だったことでしょう。」
ラクスの、心に寄り添うような声に、
カガリは肩にもたれるような声で応えた。
僕は、ラクスとカガリの友情にほのぼのとした気持ちを覚えながらも、
やはり切ない気持ちを抱いた。
これで、切ないポイント2。「うん。反省してる。
あっ、でも、大丈夫だったんだ。」「誰かが、おさめてくださったのですか。」
ラクスの心を引き出すような声に、僕は目を瞠る。
やっぱりラクスはこういう所、すごいと思う。画面の向こうでは、カガリがほてった頬を誤魔化すように手の甲で擦っている。
あぁ、もしかして・・・
もしかしなくても・・・「うん・・・、
アスランが・・・。」やっぱり・・・。
切ないポイント3。
僕はこぼれそうになる溜息をカルアミルクで飲み込んで、
その横でラクスは両手を合わせて無邪気に喜んでいる。
でも、続く言葉に僕はカルアミルクを危うく噴出しそうになった。「あのな・・・、
アスランが・・・その・・・、格好良かったんだ・・・。」え・・・?
今、なんつった・・・?
誰が格好良いって?
え?
誰?誰?
まさかあの、へたれハツカネズミの事じゃないよね。「それは、どういうことでしょうか。」
きょとんと瞳をまるくした愛らしい恋人がいて、
僕はなんとなく、これ以上聴きたくないような気持ちだった。
だって、なんとなく・・・、
格好良いアスランって・・・癪にさわるじゃんっ!「えと・・・。」
言葉に詰まって潤んだ瞳を泳がせながら、きゅっと掌を握って・・・
あぁもう、恋するカガリって可愛いんだよな・・・。
その仕草に、切ないポイント4。「私がな、暁に乗って戦う時はな・・・。」
あー、カガリそんな事言ったんだ。
そりゃ、軍のみなさん心配して暴動が起こるだろうに。
ほんっと、自分のことになると鈍感になるんだよね、カガリって。「アスランが・・・言ったんだ。
みんなの前で。
“ 生きて、護り抜く ”って。」そう言ったカガリの笑顔は、陽の光のように眩くて、
やっぱりアスランの事は癪にさわるけど、素直に僕は嬉しく思った。
2人は恋人から、カガリとアスランだけにしか出来ないような関係へ変わって、
それでも2人は想い合っているのだと、
僕は素直に安堵したんだ。
もうすぐ、2人はもう一度、手を取り合うことができるんじゃないかって。でも、おかしいなぁ〜、
こういう所だけ、僕とカガリはシンクロしないんだよね。「でな・・・。」
そう言って、カガリは握った拳を一心に見詰めるようにしてぐっと力を込めて、
凛々しく顔を上げた。「その・・・、羨ましかったんだっ!」
・・・え?
カガリ、今なんつった?
え?
ときめいちゃったり、したんじゃないの?
惚れ直しちゃってり、したんじゃないの?「アスランが、羨ましかったのですか?」
おっとりとラクスが問うと、
カガリは小さな拳をぶんぶん振って強く頷いた。「うんっ。
だからな、
私も格好良くなりたいぞっ!」そう結論付けて、自分に自分で納得したように大きく頷いたカガリは、
スコールの後に広がるオーブの蒼い空のように晴れ渡った顔をしていた。そして、
僕の釈然としない気持ちも、切ないポイントも全部チャラになった。カガリのこういう、ちょっと鈍くて、
ちょっと思考がずれちゃうところが、
僕のツボだったりするのである。
さてと、カガリとおしゃべりを楽しんだら
“格好良かった彼”とも久しぶりに話そうかな。
僕のこの鬱憤を全〜部ぶつけなくちゃ、釈然としないや。
え?全部チャラになったんじゃなかったかって?もちろん、カガリに対してはね♪
「っ・・・・!」
調度その時、アスランは不意に走った寒気に両腕をさすった。
キラ視点Fin.
→ アスラン視点へ続きます!
* * * * *
【あとがき】
今回はキラ視点で、ちょっと遊びの入った内容でした。カガリの結論は「アスランのように格好良くなりたいぞ!」となりましたが、
こんな風にちょこっと思考がズレてしまうカガリで、
キラ兄様は救われるのでした。キラの切ないポイントは累計加算されて、
“格好良かった彼”に謂れの無い天罰が下ることでしょう(笑。
しいて言うなら、「僕を切なくさせた罰」でしょうか?さて、おまけAとしてアスラン視点が続きます。
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