12-17 胸に釘を打ちつけて
アスハ代表が搭乗したシャトルが襲撃されてから、
10日が過ぎた。アスハ代表が脱出ポットに同乗していなかったとこを伏せるために、
脱出ポットが発見されたことはオーブ政府によって伏せられている。
そのため、オーブの国民だけではなく世界からもアスハ代表の生存を絶望視する声が上がり、
責任問題の矛先はオーブ軍だけではなく捜索隊のアスランにも向けられるようになった。今すべきことは、絶望に傾いたまま責任を叫ぶことではない、
持てる力の全てを注ぎ、救出することであると
誰もが分かっている筈なのに。絶望の香りを人は敏感に知覚する。
捜索隊内部に広がりだしたそれを打ち消すことは
最早アスラン一人では不可能な状況まで達していた。絶望に蝕まれ始めた心は
ふとした瞬間にも最悪のシナリオを読ませる。
それはアンリもまた例外では無かった。「食事・・・ですか?」
突然のアスランからの誘いに、アンリは面喰った。
「あぁ。アンリもまだだろう?」
刻一刻と空気が絶望に変色していく中で、
アスランだけが常と変らぬ空気を纏っていた。
アンリに掛けた言葉も声も、
まるでオーブにいた時と変わらない。
切り離された時の中にいるような錯覚さえ覚える。
そうしてアンリは自分の足元に視線を落とした。――錯覚って、何だよ・・・。
今自分が何処に居るのか、
何処へ向かおうとしているのか、
見誤っているのは自分なのではないだろうか。「ほら、置いていくぞ。」
「あっ、はいっ!」
自分の機体の整備も終わらないまま
アスランに連れてこられたのはダイニングだった。
困惑気味のアンリを置いて、さっさとトレーを手にしたアスランに続いて
アンリも着けたままだったグローブを外して後に続いた。
食事の時間がずれたのであろう、ダイニングにはアスランとアンリの二人きりで
向かい合わせに座った彼らの間に2つの湯気が二重螺旋を描いて消えた。
アンリの前にはポトフ、アスランの前には中華粥。「いただきます。」
蓮華を持ったアスランに続き、アンリも食事を始めた。
と、アンリの口から独り言がこぼれた。「意外、だな。」
蓮華を口に運ぶ手を止め、アスランはきょとんとした顔を曝した。
その表情が何処か幼さを感じて、アンリは笑みを零しながら言葉を加えた。「アスランが中華粥を好きだなんて、知りませんでした。
この間も食べてましたよね。」アンリの言葉に、アスランはあまりに自然に瞳を流して
「そうかもしれないな。」
と一言返すと色とりどりの薬味がのった中華粥を口に運んだ。
アスランは中華粥が好きだから選んだのではない、
記憶があるから選んだのだ。
カガリを失って最初に苦痛になったのは食事だった。
あの時から空腹を覚えることは無くなった。
しかし、食事を取らなければ捜索隊の心配を煽る事になることは目に見えている。
故に食事を避けることは出来ず、定刻になるとダイニングに姿を現した。だが、まるで味覚を失ったかのように味を感じることができなくなり、
料理を味わうことはもちろん、食事を楽しむことも出来なくなった。だからアスランは記憶を頼りに食事をしていた。
中華粥の色どりに、アスランはモニター越しにカガリと取った食事を思い出す。メンデルで仲間を失い、freedom trailの存在に心が砕かれそうだったあの時。
そう、あの時も君は突然画面の前に現れて、――“食事をしよう”、カガリがそう言って。
2人で食事をしたんだ。
Freedom trailを目にして以来、食べ物を一切受け付けなくなった事実を必死に隠して、
シチューを口に運んだ。
今思えば、きっと君は全てお見通しだったのだろう、
俺が食事を取れなくなったことも、
眠る恐怖に襲われていたことも、
何もかもがぼろぼろだったことも。あの時。
画面を挟んで2つの湯気が揺らめいて“絶品だっ!”
蓮華を握り締めながら満面の笑みを返してくれた君。
あの時、カガリが食べていた中華粥の味は知らない、
だけど、どれ程美味しいものだったのかは知っている。
あの時の君の顔を思い出せば。
「あの・・・。」
戸惑いを含んだ声に顔を上げれば、
意を決したようなアンリの表情があった。「どうして、俺を起用してくれたんですか。」
「連れて行けと言ったのは、アンリだろ?」
オーブの常夏の風のように優しい声。
アスランの問い返しは最もだが、アンリは言葉を続けた。「起用してくれたのは、すごく嬉しいです。
でも、俺は突出した技術も無いし、
経験だってまだまだ足りないし・・・。」現に、アスハ代表の生存が絶望視されるようになったここ数日は
心が折れそうになる自分を必死で奮い立たせてきた。
技術も経験も、そして精神的にも
自分は未熟すぎると痛感する。「納得がいないのか。」
アスランの声色に厳しさが交じったが、
アンリは真っ向から向かっていった。
それが自分の強さだと、気付かずに。「おかしなことを言っていると、分かっています。
でも、どうしてなのか理由を聞かせてください。」アスランはおおらかな笑みを浮かべながら蓮華を置き、
瞳を合わせるように向き直った。「似ていると、思ったからだ。
アンリが、メイリンに。」突然出てきた名前はアンリの耳をくすぐって
胸の内をふわりとあたためる。
感情が揺れる、それだけで瞳に膜が張るのは
自分の精神が極限の状態にあるからだろうか。「真実を見誤らず、
実現したい未来を信じ続ける強さを、
アンリは持っていると、俺は思う。」そう言って、アスランは先程と変わらぬ表情で食事を続けた。
アンリは、アスランの沈黙によって告げられている気がした、
“大丈夫だ”と。
“信じることを貫いて、歩き続けていい”と。――本当に、自分にはそんな強さがあるのだろうか・・・。
重力に抗えず視線は下がり、二重螺旋を描くような湯気に留る。
――励まされなければ次の一歩さえ出ない自分が。
――本当は、アスランの力にならなくちゃいけないのに
俺は、支えられてばかりで・・・。アンリは思考を振り切るように頭を振るとフォークを持ち直し、
震えそうになる唇をこじ開けて、ジャガイモを口に押し込んだ。
舌が焼ける程熱いジャガイモを気合いで飲み込んで、間髪いれずにニンジンを口に放り込んだ。
自分が強いかなんて分からないし、
そもそも自分が強いなんて、思ったことも無い。
ロイ兄のように頭がキレる訳でも、
アスランのようにMSを操れる訳でもない。
ムゥさんのように経験も無ければ器用でも無いし、
コル爺のように誇れる技術はこの手にない。――だけどっ。
マナーを吹っ飛ばしてアンリはスープを飲み干し
腹の底から息をついた。――前に進むしかないんだ。
がむしゃらに食事を終えたアンリは、アスランに向き直って告げた。
「俺、諦めませんから、絶対に。」
「やっぱり、アンリを連れて来て良かった。」
微笑むように頷いたアスランが零した言葉に、
アンリは瞳を見開く。「えっ。」
「頼りにしている。」
向けられた眼差しに確かな熱を感じて、アンリは思い知る。
向けられた期待に気付かない振りをして否定してきたのは自分だったのだと。
本当はきっと、いや絶対に、
自分にはアスランを支える力を持っていたんだ。――今も。
「はいっ!」
いつもの快活さを戻したアンリに、アスランは目を細める。
食事を終え、持ち場へ戻るために歩み出した背中に頼もしさを感じる。アンリに向けた言葉に嘘は無い。
これから迎える時代に必要な力を、アンリは持っている。
だから、問わずにはいられなかった。「アンリ。」
無限に広がる宇宙を背にしてアンリは振り返った。
「アスハ代表を救出したその先で、
俺たちは何と戦うべきだと思う。」アンリは驚いた瞳をさらして立ち止まり、
「何と・・・ですか。」
アスランはそのまま宇宙に視線を馳せた。
「あぁ。
俺はずっと考えている、
何と戦うべきなのか。」アスハ代表を救出した後に、オーブ軍は犯行グループの特定及び捕縛に動き出すだろう。
そうなれば、俺たちは命令を下され任務を遂行する。
だがそれで本当に全てが終わるのだろうか。――いや、終わらない・・・。
これから来る時代に
きっとこの問いは繰り返される。
俺たちは何と戦うべきなのかと。だからアスランはアンリに問わずには居られなかったのだ、
共に闘う仲間として。アンリからはいつの間にか快活な笑みが消え、
精悍な表情で宇宙に視線を馳せている。
その横顔にアスランは確信する、彼ならきっと答えを見つけられると。その時だった、アスランの携帯用端末から緊急を要する着信音を鳴らす。
アスランが通信を開始すれば、オペレーターが困惑を含んだ表情で告げた。“ザフトのイサーク・ジュール隊長から当艦へ通信が入っております。
おつなぎいたしますか。“体に打ちつけられるような予感に指先が震える。
一気に干上がった喉を押さえ、
アスランは常と変わらなぬ表情で応えた。
それが精一杯だった。「今すぐブリッジへ戻る。
通信はそこで。」アスランは通信を切ると端末を胸元に納めながら
細く長い息をついた。
それが微かに震えていることに気付いたのは、隣にいるアンリだけだった。
アンリはけたたましい自分の鼓動を汗ばんだ手で抑えながら問うた。「こんな時に通信を入れてくるなんて・・・
カガリとムゥさんを見つけたって、そういう・・・」息を詰めたアンリの声に、アスランは穏やかな表情のまま応える。
その声は酷く掠れていた。「分からない。
プラントはバルティカと戦争中だ、
そんな時に通信を入れるリスクを負ってでも伝えるべき何かがあるんだろう。
アイツは律儀な奴だから。」それだけ言うと、アスランはブリッジへと向かった。
それに続いたアンリは、
アスランの感情の欠片を見た気がした。オーブの国民だけでは無くこの艦のクルーまでもが
アスハ代表の生存を絶望視しても直
アスランは常と変わらぬ空気を纏っていた。
そして、ブリッジに向かうアスランの背中からは
先程見た感情の欠片の残光さえ見えない。そしてアンリは思い知る。
アスランはその胸の内にどれ程の想いを仕舞ってきたのか。誰のために、なんて決まっている。
捜索隊の仲間のために、
オーブのために。――ずっと一人で、戦ってきたんだ。
自分自身と。この時初めて、アンリはアスランに追いつきたいと思った。
護られるだけでも、
力になるだけでもない、
共に闘えるようになりたいと。
ブリッジの扉を開くと、緊張に困惑と好奇をひと匙加えたような空気が流れ込んできたが
アスランはその空気に一切染まらずに通信を繋げるように指示した。
後方で待機するアンリは息を詰め、全神経を集中させる。これから絶望が宣告されるのか、
それとも喜びがもたらされるのか。アスランは瞳を閉じて胸元に手を当てた。
軍服の上からでも感じる石の存在を確かめる。
誓いを胸にアスランは瞳を開いた。
通信が繋がりブリッジの画面に戦友が姿を現し、定型句のような挨拶が交わされる。
会話を成立させながら、アスランは
イザークの冷涼な色彩の瞳がいつもに増して鋭い事に気付く。
まるで、釘を胸に打ち付けるように。
眼差しで送られたメッセージを読み解くのであれば――顔色を変えるな・・・と言う事か・・・?
イザークのいる場所は恐らくメンデル調査隊の艦のブリッジであろう。
彼が手を置いた台の形状と背後に映る設備に見覚えがある。互いに公の場での通信を選んだ理由は恐らく一致している。
第一に、プラントとバルティカが戦争中であるため
スパイ行為の疑いをかけられることを避けるため。
そして第二は――通信を傍受されるリスクを負ってのことか。
イザークは、この通信が何者かによって傍受されていると踏んでいるのであろう。
思考を巡らせながらも会話は成立してく。
「我々はお前が途中で投げ出したメンデル再調査の任務を終え、
本国への帰路についている。」そう、トゲを含んだ言葉もいつものイザークのものと変わらない。
ただ、胸を突き刺すような眼差しを除いて。「すまないな。
最後までやり遂げることが出来なくて、俺も心残りだ。」苦笑する、アスランの表情も常と変わらない。
ただ、覚悟を示す眼光を除いて。それを受け止めたイザークは不敵な笑みを浮かべた。
「まぁ、仕方が無いだろう、
調査隊を離脱しなければならない程の“緊急事態”だったんだからな。」微かではあるが、イザークが緊急性を印象付けような気がした。
イザークは何かを告げようとしている。
アスランは意識を集中させながら続く言葉を待った。「馬鹿がつくほど真面目なお前が、忘れ物をする程のな。」
「馬鹿は余計だ。」
そう返しながらアスランの胸を鼓動が強く打ち
その拍子に胸に打たれた釘が疼く。
イザークの視線が直も強く釘を打ちつける、
表情を変えるなと。何かを置き忘れた覚えなど無い、
仮に何かを失念していたとしても今の今まで気付かない筈が無い。
イザークの言う忘れ物、
それは間違いなく――カガリのことだ・・・っ。
自覚してしまった傍から広がる衝撃を力でねじ伏せ、
アスランは平静の表情を寸分の狂いなく塗り固める。「こちらで処分しても良かったが…オーブの機密に関わることだからな。
戦友としての義理だ、“どちらも”丁重に保管してある。
お前に返すことが出来るのは本国に入る前だけだろう。
このご時世、誤解を招くような取引はごめんだからな。」この言葉が決定的だった。
カガリは生きている、
ムゥさんと共に。
迎えに来いと、イザークは言っている。
軍服の下で肌が粟立つのを感じ、
干上がった喉元をとおる息が掠れ無いよう顎を引いた。――カガリは生きている。
――生きて・・・。
視界が霞みそうになりながらも、アスランは常と変わらぬ表情で会話を続けた。
鼓動がけたたましく鼓膜を打ち、
呼吸をする度に胸が軋んで痛みに表情が歪みそうになる。だが、ここで自分が感情を露わにしてしまえば全てが水泡に帰すのだと
イザークの眼差しが告げている。
胸に釘を打ちつけ、決して動かぬようにと。イザークが最も慎重に回避しようとしたリスクは、きっとここにある。
――カガリが無事であることを知られたら、
カガリ自身に危険が降りかかる・・・ということか。何かの偶然でカガリを保護したイザークが
今日までコンタクトを取らなかった理由はそのためなのではないか。アスハ代表の生存と所在を伏せること自体が孕む世界情勢的なリスクが
イザークの頭の中に無かったとは考え難い。
プラントとバルティカが開戦に踏み切り、
この戦争は対地球連合さえ視野に入っていることは想像に難くない。
争いの火が再び世界を包み、宇宙を切り裂く未来は避けられない。
クライン議長不在の今、アスハ代表は最後の平和の燈し火になろうとしている。
故に世界は、一刻も早いアスハ代表の帰還を求めている。それでもイザークはアスハ代表の生存を秘匿した。
彼は世界情勢的なリスクを大胆にも捨てたのだ、
アスハ代表の生存を確保するために。
それが世界の最善の利益につながると知って。「ありがとう。」
それはアスランの心のままの言葉だった。
ありふれた言葉に特別な奥行きを持つことを知るのは
目の前のイザークと、アスランの背後に控えるアンリだけだった。アスランは自身の現在地を伝えながら言葉を続ける。
「これから直ぐにそちらへ向かう。
だが、ここからではプラントへの帰還までに間に合わない。」カガリが生きている、
それだけで十分な筈なのに。
もっとカガリと繋がりたいと思ってしまう自分は何て欲深いのだろう。
だからつい言葉を加えてしまった、
イザークには応えられない問いを。
君にしか応えられない問いを。「紅のリミッターを解除すれば話は別だが。」
紅のリミッターの解除には、搭載するプロミネンスのエネルギー量が規格外のため
アスハ代表の許可が必要となっている。
最初に解除したのは、キラが地球に魂を還そうとしたあの時。
アスハ代表から口頭での許可を得て、宇宙を駆けた。そう、この問いはカガリにしか応えられない。
リミッターというキーワードに眉を寄せたイザークは
“この期に及んでくそ真面目な奴だな、お前は・・・”
と言いきらぬ内にバランスを崩し「ぉわっ!」
すっとんきょうな声を上げた。
そして台の方を睨みながら白服の裾を直すように軍服を撫で、
咳払いをし向き直った。「許可は下りるだろう。」
堪え切れず、アスランは笑い出した。
「貴様―っ!笑うなっ!」
「や、すまない・・・。」そう言いながらも笑いを止められる筈も無く、アスランは目元を押さえた。
イザークの挙動が可笑しかったのではない、
アスランに笑みをもたらせたのはカガリだった。
台の下にきっとカガリが身を顰めていたのであろう、
そしてリミッターの許可の話が出て、とっさにイザークの軍服の裾を引っ張ったのだろう。――きっと小声で“許可するぞ”と言って。
犯行グループから身を隠さなければならないなら、
この通信の様子を別室で確認する方が望ましいし
恐らくイザークのことだ、カガリのことを説得した筈だ。
だが、カガリは同じ場所に居ることを望んだ。
“この台の下に居ればバレないぞ!”とか、そんことを言って
きっとイザークを困らせたんだろう。――本当に、君らしい。
今そこに君がいること、
それだけで胸が締め付けられる。
笑いを抑えるために息を整えるふりをして、アスランは胸に手を当てた。
軍服の下に感じる石の存在が無ければ、
これ以上感情を抑えることなんて出来ない気がした。
それ程この感情は膨れ上がって、もうどうしようもないんだ。もっと君が欲しい。
もっと君を感じたい。今すぐ、君のもとへ。
“全く、失礼な奴だ”と言って苛立つように短く息を吐き出したイザークに
アスランは応えた。「了解した。
すぐに向かう。」その瞳は熱く、とろける程に甘く、
そして何処までも優しい声だった。
通信を切って、イザークは長い息を吐き出すと
文句の一つでも言ってやろうと、
カガリが隠れている台の下を覗き込もうとした。
が、それを制止したのはディアッカだった。
怒りが収まりきらないイザークの腕を強引に引っ張り艦長室へと向かわせるディアッカに、
ムゥはウィンクして台の下へと声を駆けた。「ずーっと息を顰めてなきゃいけなかったもんな、
お疲れさん。」そう、カガリが台の下から出てこないのは緊張のせいだったと、
ムゥは理由を後付けしたのだ。
つまり、本当の理由は他に在る。台の下で膝を折り曲げながら、カガリは小型のディスプレイを抱きしめていた。
おくれ毛に隠れても、その頬が朱に染まっていることが分かる。――あの顔は反則だ、バカヤロウ・・・。
久しぶりに見たアスランの姿は、最後に会った時と比べものにならない程やつれていて、
また私はアスランを追いつめたのだと、胸が痛んだ。
そう、だけど、アスランに辛い任務を強いたのは他でもない自分だけど、
それでも久しぶりにアスランの声が聞けて、
そこにアスランがいて、
笑って、
それだけで苦しい程想いが溢れて
胸が痛くてどうしようもなくて。――アスラン・・・。
左手を右手で包み込み、
小さく名前を呟いてカガリは宇宙を仰ぐように顔を上げた。
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