1-5 ポポの再会




「紹介するな、こちらはロイ。」

カガリの隣に立つ青年は、
その整った顔立ちと立ち振る舞いから育ちの良さが滲み出ていた。
「はじめまして。ロイ・ファウステンです。
お会いできて光栄です。」
キラとラクスはロイと握手を交わした。
「ロイとは小さい頃からの付き合いで、
良く遊んでやったんだ。」
「や、俺の方が年上だろっ。」
ロイはカガリの額を小突きながら、訂正する。
「終戦までプラントのコロニー・ソフィアへ留学をしていまして、
帰国後はオーブの官吏としてバイオテクノロジーに関わっています。」
「若手官僚のホープってことで、
期待されているんだよなっと。」
ムウは勢い良くロイの背中を叩いた。
ムウの言葉にロイは謙遜した表情を浮かべる。

ロイが留学していたコロニー・ソフィアには
プラントが誇る学術施設や研究所、技術開発施設が結集しており、
各国から研究者や技術者、留学生を広く受け入れ、
英知を競い合うことで目覚しい発展を遂げた。
そのため、現在では独立自治区として国家に匹敵する権限を持つコロニーとなった。
ロイはナチュラルであるがソフィアの大学へ研究員として留学できたことも、
この権限を行使してのことであった。
コロニー・ソフィアは国家であるプラントに属しながらも
独自の政策を展開し、発展してきた地域として
ひときわ特異な輝きを放っている。

 「カガリ、アスランは元気にしてる?」
キラは会場に姿を見せないアスランを気にかけていた。
「元気だ・・・と思うぞ。」 だんだん声が小さくなったカガリは、
肩の上の白い機械鳥のくちばしを撫でている。
少し曇ったカガリの目に気が付いたラクスは、
ゆっくりと首をかしげる。
「ムウたちの方が詳しいよな。」
カガリは何でもないように会話を振った。
「おぉ、相変わらずだぞ。」
「ふふ。ちょーっとワーカホリック気味だけど。」
ムウとマリューはぴたりと合った呼吸で答えた。
「そっか。」
安堵と仕方なさが入り混じったような表情がキラに浮かぶ。
そのキラの表情を見逃さず、カガリは続けた。
「あいつ、式典が始まった時はいたんだぞ!ちゃんと。」
「そうだったの。気が付いた、ムウ?」
「いいや。」
カガリはひまわりのような笑顔を見せる。
「そのうち、ちゃんと顔出すって。大丈夫だ。」
「そうですわね。」
ラクスがにっこりと重ねた。


「そうだ、キラ、トリィは?ポポが遊びたがってるんだ。」
カガリの肩の上に乗っている機械鳥ポポはアスランが贈ったものだった。
平和の象徴であるハトをモチーフとした小さな白い鳥は、肩の上を飛び跳ねる。
 「ポポ!ポポ!」
「トリィ!トリィ!」
ポポの声に呼応するようにトリィが飛来し、
2羽は戯れるように頭上を飛び回った。
「本当に仲がおよろしいのですね。」
ラクスが目を細めた、 が。
「おい、でもあれ・・・。」
ムウが指したその先で、
バサバサバサバサ!!!
ポポはトリィを追い掛け回し、
足でトリィの頭を掴んで離さない。
「いじめてるわね、完全に。」
ミリアリアは笑いをこらえ、
「ペットは飼い主に良く似るって言うし。」
マリューの言葉に一同はふきだした。
「もー、マリューさんまでっ。
あれは元気が有り余ってるだけなんだぁ〜!」
カガリは口を尖らせたが、
キラに笑顔が戻ったことを素直に嬉しく思った。

――それにしても、何やってるんだあいつ。
   キラもラクスもおまえに会えるの楽しみにしてるんだぞ。
   それに・・・

カガリの思考を遮ったのはロイの声だった。
「カガリ、ちょっといい?紹介したい方がいるんだ。」
ロイはカガリの腕を引いた。
「え、あぁ。」
「では皆さん、また後ほど。」
ロイは軽く会釈をすると、カガリの手をとりバルコニーの方へと足を速める。
と、その時、カガリの目の端にアスランが映った。

――アスランっ

駆けて行くアスランの表情に、カガリは胸騒ぎを覚えた。
そこに、理屈など無く
言葉を遮るほどの焦燥を感じさせた。




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