1-4 懐かしい声




各国からの祝辞が折り重なる厳かな式典は滞りなく進み、
やがて和やかなパーティーへと移っていった。

管弦楽器の軽やかな旋律と、
降り注ぐあたたかな陽の光。
祝福の空気をそのままに世界の縮図のあちらこちらは、
国と国が近づき友好を深める場、
国を越えて人としての関係を深める場、
そして再会の場となった。



「おめでとう!!」
重なり合った懐かしい声がキラとラクスをふわりと包む。
「キラー!!ラクスー!!」
カガリは2人に飛び込み、抱きしめた。
「おめでとうっ。」
その目は涙ぐんでいる。
「もー、カガリ・ダイブしないのっ。」
くすくす笑いながらミリアリアがたしなめた。
「おめでとう、キラ君、ラクスさん。」
マリューは大切そうにお腹に手をあて、
「幸せになれよ、2人とも。」
ムウは優しくマリューを支えている。
「ありがとう、みんな。」
キラの言葉に、
「こんなに沢山の方から祝福していただいて、
本当に幸せに思います。」
と、ラクスが寄り添った。

「キラとラクスって、マリューさんとムウさんと会うのは、
お2人の結婚式以来?」
ミリアリアの言葉に、
「えぇ、そうですわ。」
ラクスは目を細めてマシューの手元に目を向けた。
「ふふ、そうなの。」
「家族が1人増えるんだ。」
ムウは幸福そうにマリューの肩を抱いた。
「そうだったんですか。おめでとうございます。」
「ありがとう、キラ君、ラクスさん。」
マリューもまた幸福そうに微笑む。
「いつ、お生まれになるのですか?」
「あと3ヶ月くらいだ。家族ができるって最っ高だよ。」
ムーはマリューの頬にキスをした。
「もうっ、ムーったら。」
ムーとマリューの瞳には、家庭というあたたかさが燈っていた。

「ミリアリアさんとはウイングでお会いしましたわね。」
「そうなの、半年前に会ったのよ。
私もオーブへ戻ってくるのは結婚式以来。」
ミリアリアはアークエンジェルの寄贈を機にEPU本部があるコロニー・ウイングへ渡った。
2度の戦争でアークエンジェルのオペレーターを務めたキャリアが評価されてのことであった。

「カガリとこうして会うのも久しぶりだね。」
久しぶりに会ったキラが、カガリにはどこか大人びて見えた。
「本当だな。いつも会談の合間をぬってでしか会えなかったから。」
カガリはキラとラクスに申し訳なさそうな顔をし、
チロリと舌を出した。
キラとラクスはカガリの横に目を向けた。
カガリの隣にいるのは、
アスランではない。

背の高い、鳶色の目をした青年だった。




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