1-22 ピアニッシモ




照明の中に浮かび上がったビームライフルは、
不気味な光を放っていた。

ディアッカとイザークの眼光が変わる。
ある確信を確かめるように、
その糸を辿る。

カガリは腕を組んだまま動かないムウを見た。
「ムウは知っているのか?これ。」
「まぁ、俺はこっちの方専門じゃぁ無いからな。」
ムウは軽く言葉を結んだ。
だが状況は深刻であることを、
イザークとディアッカの目の色の変容から読み取っていた。

――あいつが、あんな顔ねぇ。
   ここにあっちゃ、まずいシロモノか?
      おそらくザフトの・・・。

ムウとカガリの対角の位置に来たところで、
イザークとディアッカはアスランの足を止めた。
「貴様、いつ気付いた。」

――やはり・・・か。

戦友の瞳はアスランに答えを示した。
「感づいたのは、発砲直前の光を見た時だ。
特徴的な発光をするからな、これは。」
アスランは再び横たわる兵器へ視線を戻した。
「だからこれを見せたって訳、か。」
ディアッカも視線をそらさない。
「あぁ。俺はザフトを離れて以降、
これがどう処理されているのか知らないし、
それにディアッカの方が詳しいだろう。」
ディアッカは中長距離射撃を得意とする戦闘スタイルから、
その腕と知識に長けていた。
「間違いない、これはP2グレンダ、
ピアニッシモだ。」

深い溜息を一つ入れると、
イザークはカガリの方へ歩を進めた。
イザークの潔い表情に、
カガリは不思議な安堵を覚えた。
「アスハ代表。このことについては、
明日、公式の報告の場までお待ちいただきたい。」
カガリの澄んだ目が真実を射抜き、
イザークの言葉もその背後にある何かも受け止める。
代表としての年月が真直ぐなカガリの瞳に、
受容性を帯びさせた。
「わかった。」
カガリはそう返事をすると、
ムウとアスランを代わる代わる見て
「いいよなっ。」
と、呼びかけた。
2人は頷いた。
「あいがとうございます。」
カガリは戦友の深い絆の理由を垣間見た気がした。

――こいつには、護りたいものがあるんだな。
   そこに誠実だ。
       あいつらも。

ムウは早々に2人を開放する方が良いと、
感覚的に感じ取っていた。
「じゃぁ、今日はこれで終わりにしよう。」
ムウは常に周囲が気付かない程さりげなく、
その絶妙なタイミングでフォローを入れる。

――サンキュー、おっさん。

ディアッカは小さく頭を下げた。




←Back  Next→  

Chapter 1  Top