9-4 辞令交付式 【Deep ver.@】 青翠に映るもの
【Attenntion!!】
こちらは「9-4 辞令交付式」のエピソードに、DDRの説明を加えたDeep Ver.です。
Light Ver.の序盤に以下の内容が挿入されます。時 間 軸:終戦後復興期
アフリカ北西部(カターリア国:筆者捏造)で紛争が勃発したという設定
登場人物:カガリ、アスラン、他
内 容:アスランが奮闘します!※紛争に対するオーブの世界に負う責任とは何かを問います。
→その答えのひとつとしてDDRを提示します。
※国際政治学的な硬〜い文章が入りますが、
読みすすめれば、アスランにカガリが感動しちゃいます!正直、硬ぁ〜い説明文が途中で挿入されますが、それでもOKという方はどうぞ!
また、もしよろしければ、一緒にお考えいただければと思います。
崇高な理念を持つ国が果たすべき役割とは何か、
そしてアスランが、カガリが、出来ることとは何か。
最後に、私たちが世界へ出来ることとは何でしょうか。xiaoxue
たった1枚の紙切れで、
人の人生を決するかもしれない命令を私は下しているのだと、
その事実に慣れることなんて、出来ないのであろう。何時までも。
辞令交付式が行われる講堂の控え室で、カガリは何度目かの溜息を飲み込んだ。
窓から射す木漏れ日が踊るのを見て、自分の顔が下を向いていたことを知り、苦笑する。
脇の机の上には漆塗りの盆の上に辞令が重なっていた。
一番上のそれを手に取り、書かれた名前を読み上げた。「アスラン・ザラ・・・。」
自分の声とは思え直程、細く頼りなかった。
アスランがオーブ軍に組してから2年間、彼を戦地へ向かわせたことは何度かある。
その決断をする度に胸の痛みを覚え無かったと言えば嘘になる、
だが、それ以上にカガリは心強さを覚えていた。
アスランは、必ず還ってくると、
そしてカガリ自身は、アスランが後ろを振り返らぬようオーブを護り抜くと、――まるで希望を抱くように、
信じることが出来たのに・・・。アスランを信じることが出来ない訳じゃない、
皆と共にあればオーブを護り抜く覚悟はある、
でも。
どうしようもない不安が身体に纏わりついて、振り切れない。
心に耳を澄ませれば聴こえてくる自分の声に、
カガリは瞠目した。――傍にいて・・・。
自分らしくない、縋るような思考を打ち切って、カガリは緩く頭を揺すった。
そしてもう一度、辞令の上に書かれた文字を視線でなぞる。
――DDR部隊隊長・・・か。
心の隙間から漏れた溜息、
しかしカガリの唇は淡い弧を描いた。――DDR部隊の新設を提案したのは、他でも無い、お前だったよな。
アスラン。だから、
――この任務は、アスランの望みになるのかな。
カガリは過去へ耳を傾けるように瞳を閉じた。
それはまだ、先の戦争が終結し、各国が一日も早い復興へと力を注いでいた頃だった。
戦勝国であるオーブもその例外ではなく、
むしろ小国であるが故に損失の割合は他国に比して高い程であった。
焦土と化した国土も、失った軍事力も、
そして憎しみと哀しみに疲弊しきった民も。この戦争終結後の2年間は、後に「復興と信頼の2年」と称されるように、
2度にわたる戦争で荒廃した国々は着実に復興を遂げていった。
その背景には、2大国としての地位についたプラント・オーブ間の恒久なる安定への確信があった。しかし。
力の尺度で描かれる世界地図が、
地球連合とプラントの二項対立から
地球連合、プラント、そしてオーブの並立へと変化したことにより、
国々の中で抑えられていたものが一気に噴出したことも、事実である。
地球連合が武力によって強制的に押さえ込んでいた紛争が、
各地で激化しだしたのもこの時期であった。『紛争とは、どういうことだ。
カターリア国は国民投票によって新政権が樹立したはずではなかったのか。』カガリの声は静けさを帯びた分鋭く響いた。
外相は苦味を帯びた表情を露にして続けた。『はい。しかし、反政府勢力の武力は依然として衰えず、
市街地では無差別テロが横行しております。
もし、反政府と正面衝突することになれば、
最悪の場合、基盤が固まっていない新政府は崩壊するでしょう。』この瞬間にも、罪無き民の命が奪われる可能性を容易に想像できる。
カガリは米神に指を這わせて問うた。『地球連合の動きは。』
“地球連合”という名のとおり、これまで地球各国をひとつに束ねてきたのは連合であった。
例えその方法が、
分裂する国や地域は強大な軍事力により制圧し、
プラントを絶対的な敵国とすることで統一的なアイデンティティーを発揚するというものであったとしても、
地球の国々がひとつの形を成していたことは事実である。そして、今回のような紛争が勃発した場合は地球連合が動いていた、
少なくとも戦前までは。
しかし。『それが・・・、列強である主要国は自国の復興を優先させている、と。』
その言葉にカガリは瞳を見開く。
『まさか、何も手を打っていないのか。』
言葉を変えれば、自国の国益を最優先とし
かの地の民を見殺しにしているのか、と。
外相は険しい表情のまま浅く頷いて続けた。『そう言わざるを得ない状況です。
現地で活動しているのは主にNGOで、EPUが全体の調整を行っています。
逆を言えば、創設後間もないEPUは調整以上の事は困難かと。』『だから連合はオーブにこの文書を送りつけてきたという訳か。』
そう言ってカガリは組んだ手を解き、地球連合から送付された文書に触れた。
『“カターリア紛争早期解決のための協力要請”とありますが、
聴こえは人道的ですが、この内容をのむことは不可能かと。』協力要請とあるが、その内容は大きく2つに大別される。
第一に巨額の資金援助、第二にオーブ軍の派兵であった。
要請に応えることは不可能であるが、カガリの胸に引っかかる2つの懸念があった。『しかし、この間にもカターリアの民の命が奪われているかもしれないのだろう。
それに・・・。』カガリは、協力要請に際し連合の代表が示唆的に残した言葉を反芻した。
『“もしオーブがこの要請に応えない場合、我々はオーブに問うであろう。
オーブの理念を盾に、他国で命を奪われ続ける人々を無視し続ける、
オーブの人道とは、正義とは何か、と。
そしてこれは、永久に癒える事の無い瘡蓋となって、我々の間に残るであろう。“』外相は、まるで脅しだと、忌々しげに吐き捨てた。
『オーブは連合の脅しには屈しないさ。
だが、カターリアを見過ごす訳にもいかないだろう。』そう言ってカガリは外相によって手渡された資料を突っ返した。
『関係者を集めてくれ。午後一で会議だ。』
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Chapter 9